君は桜色。
仮にも1度は好きだった相手なのに、
記憶を失ったことで変わった彼女を
愛せないのは自分が悪い。

僕の彼女に対する愛は、
所詮その程度だったのかと思うと
心が苦しくなる。

自分は、この世界で生きていく上で、
人間として生きていく上での
覚悟がまだ十分に足りなかったのだ。

自分達にふりかかる悲劇を
耐えきることが出来なかったのだ。

咲菜は彼女の母親が事情を
話したおかげで今も僕と一緒に
登下校したり話しかけてくれたり
するが、それも彼女にとっては
負担になっているのに違いない。

本当は、休み時間に言葉を
交わしているクラスメートたちと
帰りたいのだろう。

そう思うと、やりきれない思いが
自分の内側からドンドン溢れ出して
くるのを感じた。
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