ブエノスアイレスに咲く花
「しばらく、ここにいるのか?」
河野はポケットからガムを取り出すと、
相沢だけに差し出しながら言った。
「いや、生メッシを見たら帰るよ」
相沢はガムを受け取って言った。
河野はガムを口に入れ、
包み紙をぐしゃっと丸めると、
「リオネル・メッシ?
いまは代表召集の時期じゃないから、
会いたけりゃ、バルセロナ経由で帰れよ」
と言って相沢に投げつけた。
「まじかよ、それじゃあもう一つ、
地球に穴をあけないと」
相沢はそう言うと、
投げつけられた包み紙を広げ、綺麗に折りたたんだ。
いつもより酔いのまわりが早い僕は、
その後の二人のサッカーの話題に興味を示せず、
外の風にあたろうと、庭へ出た。
鉢に植えられたサボテンは
それぞれに赤い花を付けていた。