ブエノスアイレスに咲く花

「夢を見てたんだ」

僕も箸を取って言った。

「醒めてくれてよかったよ、
 俺の我慢が無駄になるところだった」

相沢は僕の目を見ずに言った。

僕はふいに、あの夏の日のカフェで、
ジンジャエールをふつふつと逆流させながら
奈津美を見つめる相沢を思い出した。


そして、
奈津美の部屋で踏んだライターの持ち主を
明らかにすべく、話を切り出した。

「相沢と奈津美が二人で飲んだ夜のことだけど」

僕がそう言いかけると相沢は、
缶ビールをいっきに飲んで僕を見た。
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