ブエノスアイレスに咲く花
「否、謎が解けたというよりは、
深まった感じかな、僕自身の問題だけど」
「俺は、まわりくどい言い方をするやつと、
いまどき一人称が【僕】の男は好きじゃないね、
それ、モテるのか?」
相沢は相変わらず地面を踵で削っている。
芝生ははがれて堆積し、
辺りの無傷な芝生にも、こげ茶色の土が
飛び散っている。
もらったメンソールの箱を
開けようとしたとき、
ポケットでケータイがふるえた。
「もしもし」
『あ、ヒロくん?私ね、
なんだか体調が悪くて会社早退して。
今日は学校、何限まで?』
「もう終わったけど、大丈夫?」
『平気平気、終わったなら、
ご飯でも行かない?』
恋人とご飯を食べにいく元気があるのに
会社を早退できるなら、
社会人も悪くないな、と
大学院に進むことしか考えていなかった僕は、
【就職】という選択肢も少しだけ
視野に入れてみようかと思った。