ブエノスアイレスに咲く花

右の頬と肩でケータイを挟みながら、
両手でメンソールのフィルムを剥がし、
会話そっちのけで
自分の将来について考えてしまった。

「今日は、相沢と飲みに行くんだよね。」

相沢は横で、そんな約束いつしたんだ、
と言わんばかりに鼻で笑った。

『そう』

「あまり遅くならなければ、
 帰りにサキの家に寄ってもいいかな?」

一瞬沈んだ彼女の声が、
すぐさま勢いを取り戻して弾んだ。


『うーん、むしろ遅くなりそうなら、
 泊まりに来ちゃえば!木曜は1限でしょう』



サキの家は大学からうちよりも近くて、
つきあいがあまり長続きしなかった僕が、
サキとは2年続いた理由のひとつにそれもある。
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