ブエノスアイレスに咲く花
クリスマスの公演には僕と相沢、奈津美の3人で行った。

その頃から僕を見る少し熱を帯びた奈津美の視線は、
年末の刺すような風に吹かれ、
次第に冷めていくのがわかった。

強がりではなく、寂しさを感じる事はなかった。

恋と愛は限りなく近いところに存在するけれど、
決して交わることのない別の感情だということを理解できた。

そして多くの人に愛されていると分かった僕に怖いものなどなく、
ただただ【エスタンシア】を聴き、
美しい相沢の姉を、相沢と奈津美の間で見ていた。

愛が点在しているとしたら、
恋はそれを結ぶ線分のようなものだと、僕は思っていた。
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