ブエノスアイレスに咲く花

空いている席がないか目視しながら、
奈津美の姿も探していた。

学食内を僕の視線が2周したところで、
入り口に一番近い
ジュースの自販機によりかかる奈津美を見つけた。

白いパーカーを着た彼女の髪は
肩に着くほどに伸びていて、
僕は声をかけようとした瞬間に、
本日19回目のくしゃみをした。

「あ、花粉の王子さま」

奈津美が僕に気付いて言った。

「これはこれは愛と美の女神様」

僕が人差し指で鼻を押さえながら言うと、
「意味わかんないっ」と彼女は笑った。


女子生徒が3人、食事を終えて席を立つのを見つけ、
僕と奈津美はそこに滑り込んで席を確保すると、
相沢がタバコを2箱右手に持ち、
「ご苦労!」と言って奈津美の隣に腰掛けた。
< 126 / 137 >

この作品をシェア

pagetop