ブエノスアイレスに咲く花
僕と奈津美はハヤシライスを食べ、
相沢はらーめんを食べていたけれど、
相沢の視線は僕たちのメニューに興味津々だった。
「ひとくち!」そう言って相沢が欲しがったのは、
奈津美のハヤシライスだった。
僕は黙って自分の食事を続けていた。
あれだけの鼻の不快感も、
食欲に占領された神経によって紛らわされる。
人間の体とは時に素晴らしくご都合主義だと思う。
「島田くんも、木曜やすみ?」
奈津美が交換したらーめんの器に両手を置いて言った。
僕は真似するなよと言った相沢を思い出して、頷いた。
「いいなぁ、私なんて、まだ今年も週5だよ」
「短大からの編入準備に比べたら、
そうでもないでしょ」
僕が続けると相沢が奈津美にハヤシライスを返して、
らーめんの器を受け取ってから
「俺は木曜、講義はないけど、朝から戦いだわ」
と言った。