ブエノスアイレスに咲く花

最大公約数の彼女


「俺らこれから映画行くんだけど、おまえは?」

食器を片付けながら相沢が言った。

「僕は図書館に本を探しに行くよ」

「卒論系?」

相沢がそういいながら器を裏返すと、
残したらーめんのスープがシンクに流されていった。

「そんな感じ」

僕は白いトレーを重ねて置きながら答えた。

「花粉が人体に及ぼす
 アレルギー症状の特例についての研究っすか」

「そんな感じ」

僕はそう言いながら先に片づけを終えた
奈津美の背後に寄って行き、
彼女の白いパーカーを彼女の頭にかぶせた。

僕が出口の前に立って振り返ると、

「なんかあいつむかつかない?」

と相沢が奈津美に言った。

奈津美は両手を頭に乗せながら相沢を見上げ、
「病人には優しくね」と言って笑った。

「なんか君たち似てきたね」

僕は笑ってそう言い、二人に手を振って、学食を出た。
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