ブエノスアイレスに咲く花
そのとき僕の視界の左から、
404教室の彼女が
アングルインしてきた。
右の肩に白くて細長い
合皮のバッグをかけて、
茶色く短い髪の毛を両手で耳にかけると、
白いイヤホンが見えた。
そのとき僕は彼女の右手の薬指に
さっきは気づかなかった、
シルバーのリングを見つけた。
相沢に目で合図しながら、
メンソールを持った両手を
思い切り上下に振って、
なんとか彼女の視界に入り込まないか試みた。
慌てた僕はケータイを落としてしまい、
相沢が作り上げた「土の山」の中に落ちた。
まさかの【水没】ならぬ【土没】に、
急いでケータイを拾い上げて、
彼女にまたかけると告げて電話を切った。
視線を戻すと、怪訝な顔をして、
左のイヤホンを外した404教室の彼女が
こっちを向いてたっていた。