ブエノスアイレスに咲く花
卒論のテーマを決め、
化学式や数式で埋め尽くされた僕の左脳の休養に、
春休みにいつもより多くの映画を見ていた。
そして戦争映画や偉人伝を見る度に思い出したのは、
歴史が苦手だった僕に高3のときの担任が言った、
【温故知新】という四字熟語だった。
そういう風にして僕の興味は、
映画から歴史と進み、
やがて語学へと派生して行った。
図書館の1階奥、語学書の並ぶ棚は、
北校舎が見える窓に面していた。
僕は春のやわらかい日差しが差し込む
その棚に向かって進み窓側に近づくと、
脳が条件反射によって命令したのか、
またひとつ、くしゃみがでた。
僕は【パブロフの犬】を思い出し、
ポケットからティッシュを取り出すと、残りが一枚だった。