ブエノスアイレスに咲く花
僕が落としたテキストを拾い上げようとすると、
それには既にフレンチネイルのアートが施された
細い指が置かれていて、
その先に白いパンプスのつま先が見えた。
立ち上がって目が合った彼女のその目の位置は、
奈津美よりもサキよりも僕の近くにあった。
「スペイン語?」
そう言って僕に拾ったテキストを差し出した彼女の声は、
長身で前髪のないスタイル、大人びた顔立ちに似合わず、
高くて、少し鼻にかかっていた。