ブエノスアイレスに咲く花
「グラシアス」
とっさに出た割に、
僕のその発言は状況の理にかなっていた。
彼女は鼻で笑ってから、
左手に提げた赤いキャンバス地のバッグから
ポケットティッシュを差し出して言った。
「いまのくしゃみは今日何回目?」
「祝、24回目だよ、さっきのくしゃみは?」
「私は、12回目だから、2分の1ね」
僕はポケットティッシュを受け取って、
「君は、君と僕の最大公約数で、僕の救世主だよ」
と言った。