ブエノスアイレスに咲く花
「私が生まれてからは例がありませんが
このサボテンの花を
咲かせることができたら、
その人はひとつだけ、
自分の願いを叶えることができるんです」
「その話、のるよ」
相沢が財布を出した。
「御代は切手代でいただきます。
花が咲いたら、
願いを書いた手紙と一緒に送ってください」
そういって女性は
花の写真が載った小さなカードと切手、
サボテンとを袋に入れ、
僕たち三人にそれぞれ渡してくれた。
「ここは、私が奢るって」
そう言って奈津美は
白い合皮のバッグの中から、
二つ折りになった水色の財布を取り出した。
そのとき奈津美のバッグから、
相沢の作った
【紙ナプキン製バレリーナ】が、
ひらりと、落ちた。