ブエノスアイレスに咲く花
寝不足の訳と女の勘
僕たちの大学から各駅停車で一駅、
駅から徒歩2分のマンションにサキは住んでいる。
オートロックの画面に【312】
と打ち込んで呼び出しボタンを押すと、
サキはモニターに目を合わせずに
「はぁい」と言って開錠ボタンを押した。
ご機嫌は、よろしくない。
きちんと蛍光灯の光るエレベータに乗ると、
中は予想以上に明るく、
体のけだるさとは違ってすっかり酔いのひいた
顔色のいい僕が鏡に写った。
部屋の前で一呼吸おいてから
インターホンを押して
ドアノブに手をかけると鍵は既に開けれていた。
僕の行動を詮索するのが好きなサキだけれど、
こういった警戒心はあまり高くないらしい。