ブエノスアイレスに咲く花
ある晩、僕が【有機化学I】
のレポートを書いていると
酔った客が文句をつけにフロントへ来た。
僕は適当に頷いてその場をやり過ごすと、
その客は戻る振りをし、支払いを済ませずに
非常階段を通って裏口から出て行った。
警察を呼んで僕が事情を説明する間に、
河野は立派なモンタージュを書き上げて
彼らに提出した。
するとその客は別の暴行事件で
指名手配されていた男に
そっくりということから足が付き、
翌日には逮捕の知らせを受けた。
それを聞き、才能に感化された相沢が、
「俺も芸術家になる」と言って河野を
美術館に誘ったのがきっかけで、
僕たちはよく集まるようになった。
河野には高校時代から付き合う
【瞳】という彼女がいたけれど、
終電を無くして帰る家は毎回違っていた。