ブエノスアイレスに咲く花
「奈津美が課題かなんかで、
川の水を採取に行くらしい、
梅雨バテが治ったら行こうぜ」
支払いを済ませた僕に相沢が、
しわの多い1000円札を差し出して言った。
「映画じゃなかったの?」
「おまえが気のある女とデートできるかよ
俺もそこまで困ってないんでね、断った」
相沢に断られた奈津美が
落ち込んでいないか気になったけれど、
懲りずに川へ誘ったことから、
華奢な体とは違った強くしなやかな心を
持ち合わせているのだろうと勝手に安心した。
僕は駅前で相沢と別れ、サキにメールをすると、
いわゆる【即レス】で返信が来た。
会社の近くの店を予約すると返信すると、
その提案は却下され、
僕はサキの家で待つことになった。
渡された合鍵を使ったのはこれが初めてだった。