ブエノスアイレスに咲く花
なるべくサキのプライドが
傷つかないように別れを切り出すと、
案の定、サキは僕のケータイを奪い、
重箱の隅を電子顕微鏡で
観察するかのようにチェックした。
【証拠】はあがらないが容疑者を
どうしても起訴したい様子だった。
「別れないから」
それでも発言は弱弱しく、
普段は名ばかりだろう
涙袋からは収まり切らない涙が溢れ、
白い頬を伝った。
奈津美に出会う前から僕のサキに対する
「恋」という類の感情は皆無だった。
それなのにサキを振りきれない僕は、
その夜、何ヶ月かぶりに彼女を抱いた。