ブエノスアイレスに咲く花
「これってジェルネイルですか?」
短めに揃った店員の爪には、
ゴールドラメのグラデーションが
夏の砂浜を思わせるように施されていた。
店員は手を止め驚いたように奈津美を見ると
「は、はい、もう伸びちゃってるんですけど」
と答えた。
奈津美は拭くことを忘れその爪に見入ると、
藁色のトートバッグからケータイを取り出し、
「写め、取ってもいいですか?
私もこのデザインにしたい!」と言った。
僕が店員からタオルを受け取ると、
奈津美はその少し日焼けした指先を持ち、
ケータイに納めた。
相沢は子供のようにストローを吹いていた。
ジンジャエールがふつふつと泡立っていた。