ブエノスアイレスに咲く花

花火大会会場の最寄り駅は、
人でごった返していた。

僕は『こちらで待ち合わせはご遠慮ください』
と駅員がしきりにアナウンスする中を通り抜け
駅前のロータリーに居場所を見つけると、
二人からの連絡を待った。

「まいったまいった」

そう言って時間通りにやってきた相沢の顔は、
初めて奈津美と飲んだ翌日と同じく、浮腫んでいた。

「また、エラ呼吸で眠ったの」

僕が尋ねると相沢は、
駅の改札から会場へと続く行列を見つめながら

「あんま寝てねーよ、
 始発までつきあわされたからな」
と言って、大袈裟に口を開いてあくびをした。

僕がポケットでケータイが震えるのに気付くと
相沢のそれも鳴ったようで、
僕たちは同時にケータイを開いた。

『駅前のコンビニで、飲み物買ってるね』

「奈津美からだね」

僕の言葉に相沢は黙って頷き、
僕たちはケータイを閉じて行列を横切り、
コンビニへ向かった。
< 69 / 137 >

この作品をシェア

pagetop