強引な彼にすっかり振り回されています
「予算はここに書いてある通りだ。使用用途は商談後の懇親パーティー。
全体的な装飾はこのイメージ画を参考にして。」
ここはオフィスビル49階。
ホテルのエントランスフロアにあるファンクションルームである。
実際の空間を見たほうが早いからと、会う場所として指定されたのだ。
電話を受けたその日に親方から受注許可を得て、2日後の今日、
約束通り私は西王寺さんと会っていた。
私は手渡された資料にざっと目を通す。
「その中でテキトーにやってくれれば良いから。」
テキトーに、というワードにカチンときたものの、感情を抑えつつも言葉を返す。
「あの……副社長すみません、もう少し具体的な懇親会の内容をおうかがいしたいのですが。」
「悪い、今日は、このアポを無理やり入れ込んだから時間がもうないんだ。」
会場下見は十分だよねと言わんばかりに、部屋のドアに向けて退出を促す手が示される。
「でもっ、これだけでご依頼を引き受けるわけには……!」
私が動かないのを横目にドア方向へ歩きだそうとした西王寺さんの袖口を思わず掴みながら訴える。
「じゃあ、おれの時間に合わせられるか?」
爽やかなイケメンが、意地悪く微笑んだ。