光は空と地上に輝く
学校についてすぐ、職員室に呼ばれた。
「落ち着いて聞いてくれ。実はな、林が事故に遭ったんだ。意識が戻っていないらしい。」
「事故に遭った?意識が戻っていない?なに言ってるんですか先生?そんなの嘘に決まって」
私はその瞬間、意識を失った。
目が覚めたとき私は保健室にいた。
「河合さん!大丈夫かい」
保健室の先生の声が聞こえた。隣には安藤先生もいる。
すぐに思い出す。
今朝の出来事が頭のなかを駆け巡る。
「ねぇ、ホントなの?嘘だよね?」私は泣いていた。先生に何度も聞いた。同時に流架にも聞いていた。この場にはいないのに。
そのとき、いつもは厳しい安藤先生が涙を浮かべながら言った。
「林は生きてる!死んでないんだ!泣くな!」
私の心は折れかけていた。
すぐに遥と直樹も保健室に来た。二人のおかげで落ち着いた私は、三人で休みを取って病院に行くことになった。先生が許可してくれた。
 
数時間後、病院に着いた。たしかに彼は生きていた。目覚めていないけれど…。それでも少し安心できた。
「香歩ちゃん!」
声と同時に抱かれていた。
あの黒髪。
流架のお母さんだ。
「香歩ちゃん大丈夫?」
そう言うお母さんも、いやお母さんの方が泣いていた。
「流架は!流架は大丈夫なんですか!死んだりしませんよね?」
最後の方は声がかすれていた。
「わからない。わからないの…。でも、大丈夫。流架なら目を覚ますから。香歩ちゃんがいるんだもの」
二人が帰っても、私は流架の傍らで泣きながら一日を過ごした。
「香歩!この桜並木きれいだね!」
「香歩!…………。」
「香歩!……………。」
「香歩!………………。」
 今までの思い出が夢で何回も出てきた。私の名前を呼ぶ流架が何度も出てきた。
私は病院で寝てしまったらしく、起きた時、流架が傍にいた。意識がないのに私には微笑んでいるように見えた。いい夢をみて幸せそうに寝ているようにしか見えなかった。
「流架、目を覚まして。また楽しい時間を過ごしたいよ。流架………。」
 私には耐えられなかった。流架のいない生活が始まってしまうことが、何よりも。
 その日から私は学校に行かなくなった。毎日病院か家で過ごすようになった。遥と直樹は何度も会いに来てくれるが、他には誰も来ない。遥と直樹だけが折れかけた心をつなぐ支柱になっていた。
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