光は空と地上に輝く
~その日から一〇日後~
突然流れ出した音楽で目を覚ました。LINEが来た時に設定している音楽だった。それも仲のいい特定の友達にしかつけていない音楽だった。時計を見るとまだ八時だった。何とか目を開けて、とても細かったけれど、なんとか画面を見た。
翔 「おはよう!どう?進展あった?」
すごく迷惑だった。不機嫌にもなった。何せ成果はないのだから。それでただ一言。
香歩「ないよ」
翔とLINEできるのは嬉しいけど、はっきり言って迷惑だった。それなのにすぐに返信が来て曲が流れる。
翔 「なんか機嫌悪い?なんか悪いことしちゃった?あ、そういえば朝苦手だったっけ?ごめんごめん笑」
分かってるならLINEするな!そう思ったらもうすっかり目が覚めてしまった。目を覚まさせてくれてありがとうと思うことにした。するとすぐに次のメッセージが来た。
翔 「また夢を見たよ。」
夢という言葉を見ると心臓の音が大きくなる。手がかりはその夢にしか出てこない。LINEに目を凝らす。次のメッセージに期待した。
翔 「新しいヒントをくれたよ。」
翔 「ヒントは流架のものだって。でもそれは香歩の家にあるって。よくわからないけどとにかく伝えたからね。頑張って!」
さすがに流架の家に行くには早すぎる。私は先に四冊目を読むことにした。
四冊目。唯一私が流架から借りっぱなしの本。まだ途中だった。その本は一〇〇〇ページあって、さすがに全部は読みきれなかった。残り二五〇ページくらいを一時間ほどかけて読みきった。そして流架のお母さんに電話する。事情を話すと予想通りの反応だった。戸惑っていた。無理もない。とりあえず家に行けることにはなった。
流架の家に着くなり私は部屋に向かった。流架が「大切なもの」をしまっていると言っていた場所があったのを思い出した。
私たちの「桜」が満開になった次の日、私は流架の部屋に行っていた。もう何回目だろう。軽く一〇〇回は越えている。でもこの日は特別だった。私たちが新たな一歩を踏み出したばかりだから。ベッドに座っていた。
「ねぇ香歩、見てもらいたいものがあるんだ」
「何?気になる」
私はベッドから立ち上がってその場所に行った。そこは、私のよりも大きな本棚だった。
「この人覚えてる?」
そうして手渡されたのはあの小説家の遺作だった。その小説家のことは全て覚えていた。
「覚えてるよ。読みたい!」
「それなら貸してあげるから読んでみて!」
私は本を借りてそのまま流架のベッドの上に寝転んで読んだ。
クラスでは目立たない少女と、病気で余命宣告された人気者の男子が出てくる。最終的にその男の子は死んでしまうけれど、その少女に出会って『最初で最後の恋、楽しかったよ』と言って死んでしまう。そんな、切なくて泣ける小説だった。そして、私は読みいっていた。その文体が、
表現が、描写が、全てが私好み。デビュー作を読んだ時にもそう思った。
読み終わって流架に返そうと振り返ると、流架は寝てしまっていた。
「流架ー起きてー」
呼び掛けても起きない。私は自分の携帯を取って寝顔を撮った。くすぐっても、頬をつねっても、それでも起きなかった。
「香歩ー起きてー」
起きた流架に起こされた。私も寝てしまっていた。そんな記憶はないのだけれども…。本を返して帰った。
大好きな小説家に出会って、かわいい流架の寝顔写真を撮って、ほんとに最高の1日だったなあ。なんて思い出していた。
現実に戻った私はすぐさま本棚を見つめた。私よりも本が多い。どこから手をつけたらいいかわからなかった。
「ん?何だろう…」
しばらく見つめて気づいた。一冊分のスペースが空いているところがあった。それも二ヵ所。一つは借りっぱなしの本のスペース。それはすぐわかったのにもう一つの本は全くわからない。とりあえず他に何かないか探すことにしたけれどなにも見つからなかった。家に帰って続きを読むことにした。
五冊目、六冊目、七冊目、八冊目、九冊目、一〇冊目。二日かけて読んだ。じっくり読んだ。それでも流架と関係ありそうなものは何もなかった。
突然流れ出した音楽で目を覚ました。LINEが来た時に設定している音楽だった。それも仲のいい特定の友達にしかつけていない音楽だった。時計を見るとまだ八時だった。何とか目を開けて、とても細かったけれど、なんとか画面を見た。
翔 「おはよう!どう?進展あった?」
すごく迷惑だった。不機嫌にもなった。何せ成果はないのだから。それでただ一言。
香歩「ないよ」
翔とLINEできるのは嬉しいけど、はっきり言って迷惑だった。それなのにすぐに返信が来て曲が流れる。
翔 「なんか機嫌悪い?なんか悪いことしちゃった?あ、そういえば朝苦手だったっけ?ごめんごめん笑」
分かってるならLINEするな!そう思ったらもうすっかり目が覚めてしまった。目を覚まさせてくれてありがとうと思うことにした。するとすぐに次のメッセージが来た。
翔 「また夢を見たよ。」
夢という言葉を見ると心臓の音が大きくなる。手がかりはその夢にしか出てこない。LINEに目を凝らす。次のメッセージに期待した。
翔 「新しいヒントをくれたよ。」
翔 「ヒントは流架のものだって。でもそれは香歩の家にあるって。よくわからないけどとにかく伝えたからね。頑張って!」
さすがに流架の家に行くには早すぎる。私は先に四冊目を読むことにした。
四冊目。唯一私が流架から借りっぱなしの本。まだ途中だった。その本は一〇〇〇ページあって、さすがに全部は読みきれなかった。残り二五〇ページくらいを一時間ほどかけて読みきった。そして流架のお母さんに電話する。事情を話すと予想通りの反応だった。戸惑っていた。無理もない。とりあえず家に行けることにはなった。
流架の家に着くなり私は部屋に向かった。流架が「大切なもの」をしまっていると言っていた場所があったのを思い出した。
私たちの「桜」が満開になった次の日、私は流架の部屋に行っていた。もう何回目だろう。軽く一〇〇回は越えている。でもこの日は特別だった。私たちが新たな一歩を踏み出したばかりだから。ベッドに座っていた。
「ねぇ香歩、見てもらいたいものがあるんだ」
「何?気になる」
私はベッドから立ち上がってその場所に行った。そこは、私のよりも大きな本棚だった。
「この人覚えてる?」
そうして手渡されたのはあの小説家の遺作だった。その小説家のことは全て覚えていた。
「覚えてるよ。読みたい!」
「それなら貸してあげるから読んでみて!」
私は本を借りてそのまま流架のベッドの上に寝転んで読んだ。
クラスでは目立たない少女と、病気で余命宣告された人気者の男子が出てくる。最終的にその男の子は死んでしまうけれど、その少女に出会って『最初で最後の恋、楽しかったよ』と言って死んでしまう。そんな、切なくて泣ける小説だった。そして、私は読みいっていた。その文体が、
表現が、描写が、全てが私好み。デビュー作を読んだ時にもそう思った。
読み終わって流架に返そうと振り返ると、流架は寝てしまっていた。
「流架ー起きてー」
呼び掛けても起きない。私は自分の携帯を取って寝顔を撮った。くすぐっても、頬をつねっても、それでも起きなかった。
「香歩ー起きてー」
起きた流架に起こされた。私も寝てしまっていた。そんな記憶はないのだけれども…。本を返して帰った。
大好きな小説家に出会って、かわいい流架の寝顔写真を撮って、ほんとに最高の1日だったなあ。なんて思い出していた。
現実に戻った私はすぐさま本棚を見つめた。私よりも本が多い。どこから手をつけたらいいかわからなかった。
「ん?何だろう…」
しばらく見つめて気づいた。一冊分のスペースが空いているところがあった。それも二ヵ所。一つは借りっぱなしの本のスペース。それはすぐわかったのにもう一つの本は全くわからない。とりあえず他に何かないか探すことにしたけれどなにも見つからなかった。家に帰って続きを読むことにした。
五冊目、六冊目、七冊目、八冊目、九冊目、一〇冊目。二日かけて読んだ。じっくり読んだ。それでも流架と関係ありそうなものは何もなかった。