光は空と地上に輝く
~日記~~

 九月二五日
余命宣告されちゃった。何もしなければ余命は一年だって。一度はそれなりに回復したのにな。香歩に伝えるべきか迷うな。
 二六日
定番だけどやりたいことを五つ考えた。
①香歩とまた映画に行く
②香歩とあの場所に行く
③香歩と夕日を見る
④また外国に行く
⑤香歩に一人を卒業してもらう
それまでは絶対に死なない!そして、香歩には何も言わない。
二七日
治療が始まった。前回よりもきつい治療らしい。でも香歩に会うために乗り切る!
 二八日
かなりきつい。でも香歩に会いたいから頑張る。一回は完治させたんだから
 二九日
少し楽になった。抗がん剤はいやだ。
 三〇日
数値は変わらない。香歩元気かな?
 一〇月一日
香歩とどこかに行きたいな
 二日
もう少しで一年か。短かったな。もっと香歩と一緒にいたい
 三日
一年記念にどこか行こう!どこが良いかな。映画も良いし、あの場所に出かけるのも良いし、香歩を驚かせよう。
 四日
記念日に退院許可もらうために今日から治療がきつくなるって。香歩に会うために頑張ろう。楽しみにしててね香歩
 五日
しんどい。
 一一日
だるくてあまり動けない。しばらく日記も書けなかった。でもあと四日の辛抱
 一二日
夜にこっそり抜け出して屋上で夜の空を見た。香歩、元気かな。香歩は見てるかな?笑
 一三日
今日は副作用も無くて体も楽だった。このまま治ってくれるといいんだけどな
 一四日
いよいよ明日!超楽しみ!やっと香歩に会える。香歩に気づかれないように元気なふりしないと。
 一五日
①②③達成!きれいな夕日と真っ赤な頬をした香歩。晴れてくれて良かった。良い一日になったな。改めて、一年おめでとう、自分。目指せ二年
 二一日
治療が変わった。親は何も言わないけど、延命治療だろうな。本当は余命もうちょっと短かったのかも。
 二五日
海外旅行してたら香歩を元気づけられなくなっちゃうから、国内旅行することにした。いつでも香歩に会いに戻ってこられる距離。でも全国を回るから中学卒業までかかるかも。もしかしたら途中で倒れて戻ってこられなくなるかもしれない。香歩には転校って嘘をつこう。
 二六日
これから香歩のお母さんにこれを渡す。レコーダーと一緒に。死んだ時に香歩に渡してもらう。少しでも香歩の支えになれるといいな。
 香歩へ
何も言わなくてごめんね。香歩の笑顔を見たかったんだ。わがままでごめん。昔からずっと一緒で、ほんとに楽しかったよ。香歩が幼馴染みで、彼女で良かった。大好きだよ。本当にごめんね。幸せにね!
 
日記はそこで終わった。私と翔、ふたりの涙で字がにじんでいるところが何ヵ所もあった。
翔は一度も弱い自分を見せなかった。私のために。私はなにも気づかなかった。その頃の私の唯一の友達だったのに。
レコーダーを流した。

『香歩!やっほー!香歩のことだから泣いてると思うけど、少しでも香歩に元気出してもらいたいから言わせてね。
香歩、頑張れ!
何かあったらこのレコーダーを聞いて元気出してね。このレコーダーは香歩が好きなようにしていいよ。ずっととっておいてくれるとすっごい嬉しいけど、いつまでも香歩を縛りたくないから捨てていいよ。とにかく、元気出してね!じゃあ、ばいばーい』

涙が止まらなかった。翔はただ転校しただけだと思っていたから。翔はいつも笑っていたから。
「本当は私の近くにいたかったくせに。ごめんね翔。」
 隣にふたりがいるのも忘れてひたすら謝って、日記を抱いていた。翔を知らないふたりは、それでも泣いている私に寄り添ってくれた。
「私ずっと香歩の友達だよ。香歩がイケメンと付き合っても、喧嘩しても、ずっと。今もうイケメンと付き合ってるしね」
いつもの遥のいじりで笑った。
「僕もだよ。ずっと友達。だから、僕たちのもう一人の友達を助けよう!絶対に!」
 笑いながら泣いている私に、力強くそう言う直樹。その言葉に私は涙を拭って、そして日記とレコーダーをアルバムが入っている机の中にそっと入れた。
「ふたりともありがとう。流架のためにまだ手伝ってね!」
ふたりが帰ってから、日記を何度読み返した。寝る前に日記を表紙が見えるようにして本棚においた。私の味方がそこにいるだけで、安心感に包まれた。翔に会えることを願って寝た。
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