光は空と地上に輝く
「私が大学三年の時、直樹は中二の時かな、私の友達が冬道で転んで怪我したって連絡があった。その友達とは姉弟そろって仲が良かったから、その友達はかすり傷程度で何ともなかったんだけど一応入院していたから、友達のお見舞いに行こうとした。だけどその途中で直樹と喧嘩して別れた。私は直樹を追いかけたんだけど、そのせいで直樹が赤信号を走って渡ろうとした。もちろん、車は走ってる。私は怖くて動けなかった。そのとき、ひかれそうになった直樹を助けようと大学生くらいの女性が走っていった。直樹は助かったけど、その女性は車とぶつかった。」
お姉さんが涙を流し始めた。
「すぐに警察と救急車が来て、女性は救急車で運ばれていった。何日か経ってから警察に聞きに行った。女性はどうなったか。もちろん最初は教えてくれなかった。でも女性の両親がちょうど来て、女性の父親が教えてくれた。私は殴られるんじゃないかと思った。私が喧嘩しなければ、女性は死なずに済んだんだから。でも、あの子はそういう子だって言って、直樹には今は教えなくて良いから、怪我が治ったら教えて線香をあげに来てほしいと言った。そして、直樹が退院したときに女性が亡くなったと伝えて、約束通り線香をあげに行った。それがその事故のすべて。1番の秘密はここから。」
お姉さんは私たちの目を見て言った。
「その女性は、流架くんのお姉さん、美愛さん。そして私たちは、流架くんにとって、姉を死に追いやった張本人。」
直樹はそれまではベッドに顔を伏せていた。でも、顔を上げて私たちに言った。
「ここからは僕が言うよ。お姉ちゃんは知らないことだから。僕は流架がその女性の弟だと知らず、流架も、高校生になっても、姉の死の真相は知らなかった。でも高二になるときに転校してきて、偶然クラスに僕がいることを何週間かしてから知った流架の両親は、流架に真相を話したらしい。僕の名前は伏せて。その時には僕はもう流架と、遥と、香歩、三人と仲良くなってた。でも、僕だと言った。流架になら殴られても構わなかった。でも流架は、『恨まないよ。お姉ちゃんが命がけで助けたのが直樹で良かった。真面目で人を思いやってくれる、いい人で良かった。ふたりには秘密にしておこう。ふたりが知ったらどうなるかわからないから。四人で仲良くしたいから。』って涙ぐみながら言ったんだ。そして、この秘密を守ること、つまり、嘘をつき続けることは、流架の願いだった。そして、今になって今度は流架が事故に遭って意識がないって連絡が来た。胸が締め付けられた。流架はお姉さんのもとに、空に行こうとしてると思った。そしたら僕は香歩と遥から大事な友達を奪うことになる。そして、昨日病室に行って見つけてしまったあの本。それは、流架のお姉ちゃんが残した特別な小説。世界に一つしかない、MIAの未発売の小説。つまり、流架は高二になってから毎日、『お姉ちゃん』とお姉ちゃんを殺したも同然の人間と一緒にいたんだ。それを考えたら、つけられてるのにも気づかずここに来ていた。そして、僕は今流架と約束したのに秘密を打ち明けた。もう友達じゃいられない。僕は…」
そしてまたベッドに伏せた。すると遥が泣きながら言った。
「直樹。私はそれでも直樹と友達でいるよ!流架だってそう願ったんでしょ!私は直樹をこんなことで嫌ったりしない!ね?香歩?」
私も泣きながら言った。
「うん!友達でいるに決まってるよ!だから直樹、もう自分を責めないで」
「ふたりとも…。ありがとう」
そして、全員が泣き止んだところで、私たち三人は目を赤くしながら誓った。ずっと友達だと。
< 21 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop