光は空と地上に輝く
流架と一緒に学校に来て職員室に行ってから席に座ると、廊下に出ていた流架が駆け寄ってきた。それも、さっきまで一緒に登校していたのに、今日はじめて会うかのような勢いで。
「おめでとー!今日3回目だけど」
「ありがと!何回言うつもり?」
 登校中にもおめでとうと言われていた。それが二回目。
 流架に続いて遥もお祝いしてくれた。
「それで欲しいもの思いついた?」
 二回目のおめでとうの後に、「欲しいものある?」と聞かれた。正直これと言って欲しいものはなかった。楽しい日々があればいいと思った。それで「考えとく」と言った。
 まさか考えとくと言った一〇分後にまた聞かれるとは思っていなかった。
「早いよ。まだ全然思いついてないよ」
「じゃあ帰りにまた聞くね」
そして帰りになった。学校を出てすぐ流架からあの質問をされた。
「欲しいもの決まった?」
 私は待ってましたと言わんばかりに答えた。授業中も考えていた。そして授業中にふと思いついた「あるもの」が欲しいと思った。
「決まったよ。アクセサリーほしい」
「じゃあ今から行こうよ!」
 駅に着くとすぐに駅に向かった。駅に行けば雑貨から服や時計まで何でも買い揃えられる。アクセサリーショップを探しながら、雑貨屋やファッションブランドに立ち寄った。その雑貨屋に続くこのエスカレーターに懐かしさを感じた。でもそれが何なのかは思い出せない。胸の辺りに違和感が残る。歩きながら流架が、
「どんなアクセサリーほしいの?」
と聞いてきた。
「別にそこまで決めてはないんだけど…」
歩きながら目に留まったアクセサリーショップに立ち寄っては探し回った。流架も気に入るような、そんなアクセサリーを。しばらくしてからあるネックレスに目が止まった。
「これどう?私たちにぴったりじゃない?」
「いいね、それにする?」
「うん!」
 そうして買ったアクセサリーは、私たちにとってとても意味のあるものだった。日本らしくもあり、同時にオシャレなそれは、ふたりから季節の移ろいを奪う。私たちだけの春だけが続く。しかもそれは散ることもない。私たちの幸せな時間は永遠に感じられた。
 家に着き、ソファに座り、帰っている途中に想い出したことを考えていた。
3年前にあの雑貨屋で翔とお揃いのものを買ったことがあった。その時買ったのはキーホルダーだった。中学生にとっては妥当だ。高校生になったらもうちょっと高いもの欲しいなと思った記憶がある。結局翔と同じ高校には通わなかったけれど、あの頃は翔と一緒のものを使っていると思うと、デザインが同じなだけなのに、すごく嬉しくなった。今は流架とずっと胸元に光る春の桜を見れて嬉しい。
楽しい記憶とともに、私は眠りに落ちた。

 最近翔の夢を見ない。私は得体の知れない不安を感じた。胸の辺りがまた違和感に包まれる。

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