婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「そうそう、そういうの。夫が寝るまでメイクを落とさない古風な妻にも見えるし、でも……みたいな」
「薬指に指輪してないとかは? これも部屋ではしない奥さんなんて、たくさんいるだろうし」
「いいねぇ」
盛り上がる若いふたりに対して、松野や代理店は渋い顔だ。風向きを変えたのはCMディレクターの東郷だった。彼はこの世界ではトップの実力者で、最近は映画界にも進出し、高い評価を得ていた。彼に撮ってもらえるだけで価値があるとモモのマネージャーなどは大喜びだった。
「うん。映像としては、面白いのが撮れると思うよ。その子の言う通り、立花モモのキャラクターにも合ってる。彼女の魅力は二面性にあると思うからね。ただ……演技力が問われる。ニコニコ笑ってればいい最初の案のほうが簡単だと思うよ?」
最期の台詞はモモに向けたものだ。挑発するように東郷はふっと笑ってみせた。
「やれます! やってみたいです!」
力強く、モモが言う。業界の実力者の言葉で、代理店側もあっさり折れた。
「じゃあ、当初の案と春日さんの案と両方やってみましょうか。その上で、最終判断をってことで」
会議を終えた宗介は、喫煙所に入っていく松野の背中に声をかけた。
「松野課長。すみません、新人がご迷惑をおかけして」
松野はくわえタバコで、苦笑している。
「薬指に指輪してないとかは? これも部屋ではしない奥さんなんて、たくさんいるだろうし」
「いいねぇ」
盛り上がる若いふたりに対して、松野や代理店は渋い顔だ。風向きを変えたのはCMディレクターの東郷だった。彼はこの世界ではトップの実力者で、最近は映画界にも進出し、高い評価を得ていた。彼に撮ってもらえるだけで価値があるとモモのマネージャーなどは大喜びだった。
「うん。映像としては、面白いのが撮れると思うよ。その子の言う通り、立花モモのキャラクターにも合ってる。彼女の魅力は二面性にあると思うからね。ただ……演技力が問われる。ニコニコ笑ってればいい最初の案のほうが簡単だと思うよ?」
最期の台詞はモモに向けたものだ。挑発するように東郷はふっと笑ってみせた。
「やれます! やってみたいです!」
力強く、モモが言う。業界の実力者の言葉で、代理店側もあっさり折れた。
「じゃあ、当初の案と春日さんの案と両方やってみましょうか。その上で、最終判断をってことで」
会議を終えた宗介は、喫煙所に入っていく松野の背中に声をかけた。
「松野課長。すみません、新人がご迷惑をおかけして」
松野はくわえタバコで、苦笑している。