婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「つまりね、私、女優なんて全然興味もなくて演技の勉強とかしたことないし」
「うん、なるほど」
「……やっぱり愛人っぽくなんて難しい演技は無理な気がしてきた」
撮影は一時間後に迫っているというのに、モモは泣き言を言った。
「大丈夫、大丈夫。モモちゃん、普通にしてても愛人オーラあるもん。金持ちの爺さんの隣が似合いそうっていうか」
「褒めてないから、それ!」
クライアントである株式会社クリムソンの若手社員である大地は、ちっともサラリーマンぽくなくて話しやすい。TV局によくいるバイトくんって感じだ。マネージャーにも言えない愚痴も彼には平気で話せてしまう。
「だってさ。桂木社長にも演技下手って言われちゃったし」
「それは伸びしろがあるってことだよ。社長は優しいから、見込みのない人間に厳しいことは絶対言わない」
「そうかなぁ~。大体さ、社長夫人狙ったっていいじゃないよ! 女優で成功するよりはまだ可能性ありそうなのに」
「うちの社長をゲットするのは、大女優になるより難しいよ。多分」
「え!? 桂木社長ってゲイなの?」
大地は苦笑しながら、口元に人差し指をあてた。
「婚約者にベタ惚れなんだって。あ、これ内緒ね」
モモはがくりと肩を落とした。婚約者がいるなんて聞いてなかった。社長夫人への道を完全には諦めていなかったのだけれど、どうやらノーチャンスらしい。
「うん、なるほど」
「……やっぱり愛人っぽくなんて難しい演技は無理な気がしてきた」
撮影は一時間後に迫っているというのに、モモは泣き言を言った。
「大丈夫、大丈夫。モモちゃん、普通にしてても愛人オーラあるもん。金持ちの爺さんの隣が似合いそうっていうか」
「褒めてないから、それ!」
クライアントである株式会社クリムソンの若手社員である大地は、ちっともサラリーマンぽくなくて話しやすい。TV局によくいるバイトくんって感じだ。マネージャーにも言えない愚痴も彼には平気で話せてしまう。
「だってさ。桂木社長にも演技下手って言われちゃったし」
「それは伸びしろがあるってことだよ。社長は優しいから、見込みのない人間に厳しいことは絶対言わない」
「そうかなぁ~。大体さ、社長夫人狙ったっていいじゃないよ! 女優で成功するよりはまだ可能性ありそうなのに」
「うちの社長をゲットするのは、大女優になるより難しいよ。多分」
「え!? 桂木社長ってゲイなの?」
大地は苦笑しながら、口元に人差し指をあてた。
「婚約者にベタ惚れなんだって。あ、これ内緒ね」
モモはがくりと肩を落とした。婚約者がいるなんて聞いてなかった。社長夫人への道を完全には諦めていなかったのだけれど、どうやらノーチャンスらしい。