婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「俺は異性愛者だし、立花モモは美人だと思うよ」
「え~。んじゃ、デートくらい行ったらいいじゃないっすか。こんなイケメンで金持ちで独身なんですから、多少遊んでたって誰も怒りませんよ」
「好きな女性がいるからね……どんな美人でも彼女以上には興味をひかれないんだ」

 楚々とした紅の横顔を思い出しながら、宗介は言った。
 大地は一瞬固まって、その後で部屋中に響き渡るような大声をあげた。もっとも、いつも冷静な都ですら宗介のこの発言には少し驚いたようだった。

「ま、ま、ま、マジですか? 初耳なんですけど」
「初めて話すからね。業務時間中に社長の恋愛事情を探ってくるなんて、勇気ある社員は君くらいだし」

 宗介の嫌味も、やっぱりノーダメージだ。大地は遠慮なしにどんどん問い詰めてくる。

「うわ~恋人いたんですね……知ったら女性社員はお通夜状態になっちゃいますね」
「残念ながら恋人とは呼べないかなぁ。俺の長年の片思い」
「片思い!? 社長に振り向かないなんて、どんないい女なんですか? っつーか、どこの誰っすか? 片倉専務は知ってます?」

 大地は旬に矛先を向けた。

「話には聞いてるけど、会ったことはない。会わせたくないんだとさ」
「あ~専務もイケメンですもんね! とられたくないなんて社長も案外嫉妬深いんすね」
「違うよ。会わせたら、旬が彼女に惚れちゃうから。親友が失恋するところは見たくないだろ」
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