婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
紅はますます顔を赤らめて、とうとううつむいてしまった。初心な相手をからかいすぎただろうか。
「冗談だよ。心配しなくても、今夜はちゃんと紅の家に送る」
「う、うん」
彼女があからさまにほっと胸をなでおろしたことが少し悔しい。ついつい、また意地悪を言いたくなってしまう。
「あくまでも、今夜は……ね。次はわからないから、覚悟しといて」
帰りの車内、紅はほとんど喋らなかった。ハンドルを握る宗介の隣で、ぎゅっと身を固くしている。彼が助手席に手を伸ばそうものなら、めいいっぱい全身を右側に寄せて宗介と距離を取ろうとする。その必死な様子が可愛くて、宗介は思わず苦笑を漏らす。
(まぁ、いい傾向……かな)
紅の変化は、宗介にとっては悪くはないものだった。いつまでも、安心安全なお兄ちゃんのままではいられない。
嫌われるのは困るが、男として警戒されるのはいい傾向だろう。
紅を送り届けてから、宗介は六本木の自宅へと戻った。デート帰りとしては寂しいくらいの早い時間だったが、相手が紅では仕方ない。
多少は攻めの姿勢を見せたものの、宗介は彼女にだけは弱い。紅の負担になようなことはしたくなかった。
ゆっくりと、でも確実に、距離を縮めていければそれで十分だ。
「冗談だよ。心配しなくても、今夜はちゃんと紅の家に送る」
「う、うん」
彼女があからさまにほっと胸をなでおろしたことが少し悔しい。ついつい、また意地悪を言いたくなってしまう。
「あくまでも、今夜は……ね。次はわからないから、覚悟しといて」
帰りの車内、紅はほとんど喋らなかった。ハンドルを握る宗介の隣で、ぎゅっと身を固くしている。彼が助手席に手を伸ばそうものなら、めいいっぱい全身を右側に寄せて宗介と距離を取ろうとする。その必死な様子が可愛くて、宗介は思わず苦笑を漏らす。
(まぁ、いい傾向……かな)
紅の変化は、宗介にとっては悪くはないものだった。いつまでも、安心安全なお兄ちゃんのままではいられない。
嫌われるのは困るが、男として警戒されるのはいい傾向だろう。
紅を送り届けてから、宗介は六本木の自宅へと戻った。デート帰りとしては寂しいくらいの早い時間だったが、相手が紅では仕方ない。
多少は攻めの姿勢を見せたものの、宗介は彼女にだけは弱い。紅の負担になようなことはしたくなかった。
ゆっくりと、でも確実に、距離を縮めていければそれで十分だ。