婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
宗介は地下駐車場へと愛車を滑らせていく。彼が契約しているのは、レジデンス棟のなかでも高層階住人だけが使用する専用駐車場で、EVは高層階に直結している。外部の人間とは顔を合わせなくて済むし、高層階住人同志は互いのプライバシーに配慮して必要以上に接触はしない。
世間に広く顔を知られているような人種も多いが、宗介も暗黙のルールに従い知らない振りをしている。
だから、この場所で彼女に会うとは想定外だった。
「あっ、やっぱり! 桂木社長だ~」
エントランスでEVを待つ宗介の背中に声をかけてきたのは、キャンペーンモデルを頼んでいるモモだった。今夜は結構冷えるというのに、胸元がざっくりと開いたワンピースに身を包んでいる。
「立花さん……どうして……」
最悪だな。心のうちでそう思ったのを宗介は隠しきれていなかったが、彼女は気にも留めていない様子だ。
「同じ事務所のお友達の彼がここに住んでて、今夜は食事会なんですよ~」
「へぇ……」
「桂木社長は会ったことあります? サッカー選手の……」
モモは楽しげに友達の彼の名を告げたが、あまりにも興味がなく宗介の耳には入ってこなかった。この場をどう切り上げようか。宗介の思考はその一点のみに集中していた。
ふと気が付くと、モモが胸を押し付けるようにして腕を絡めてきていた。彼女は形のいふっくらとした唇をとがらせ、かわいらしく宗介を睨んだ。
こういう仕草や表情は、やはりプロだなと宗介は妙なところで感心してしまった。
世間に広く顔を知られているような人種も多いが、宗介も暗黙のルールに従い知らない振りをしている。
だから、この場所で彼女に会うとは想定外だった。
「あっ、やっぱり! 桂木社長だ~」
エントランスでEVを待つ宗介の背中に声をかけてきたのは、キャンペーンモデルを頼んでいるモモだった。今夜は結構冷えるというのに、胸元がざっくりと開いたワンピースに身を包んでいる。
「立花さん……どうして……」
最悪だな。心のうちでそう思ったのを宗介は隠しきれていなかったが、彼女は気にも留めていない様子だ。
「同じ事務所のお友達の彼がここに住んでて、今夜は食事会なんですよ~」
「へぇ……」
「桂木社長は会ったことあります? サッカー選手の……」
モモは楽しげに友達の彼の名を告げたが、あまりにも興味がなく宗介の耳には入ってこなかった。この場をどう切り上げようか。宗介の思考はその一点のみに集中していた。
ふと気が付くと、モモが胸を押し付けるようにして腕を絡めてきていた。彼女は形のいふっくらとした唇をとがらせ、かわいらしく宗介を睨んだ。
こういう仕草や表情は、やはりプロだなと宗介は妙なところで感心してしまった。