婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「悪いが、あまり期待はしないでくれ。事務所とプライスはかなり乗り気で動いてるようだから」

 旬は苦笑してそう答えた。横から都が彼を援護する。

「立花モモはアイドルとしては珍しくアンチが少なく、世間の好感度は高い方です。桂木社長の熱愛のお相手としては、悪くないと思いますよ。むしろ真剣交際ってことでバンバンアピールしていくのもアリかと」
「う、う〜ん……それは勘弁して」

 スキャンダルのひとつやふたつ、どうってことない。それも嘘ではなかったが……紅の目にはできれば入れたくない。
 話せば彼女はわかってくれるだろうが、そんな話をするのも宗介は嫌だった。

「その立花モモですが、午後からキャンペーンの打ち合わせで広報課に来る予定になっています。先日の件を社長に直接説明したいとおっしゃってますが……」
「了解。14時までなら空いてるから、こっちに通して構わないよ」
「かしこまりました」

 ああいうやり方は好まないが、立花モモ本人に腹を立てても仕方ない。彼女はキャンペーンモデルで丁重に扱うべき存在だ。
 
「あぁ。それと、広報課はいま案件多数で人手不足だそうです。立花モモのキャンペーンの間だけでも、どこかから人を貸して欲しいとのことでしたので……総務に応援を頼もうと思っていますがよろしいでしょうか」
「あぁ。たしかにそうだな。もちろん、総務課長の許可が取れるなら構わないけど……そうだ。春日くん、君が行ってきてよ」
< 71 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop