婚約破棄するはずが、一夜を共にしたら御曹司の求愛が始まりました
「まぁまぁ小宮山さん」
「社長は春日くんに甘すぎます。後で広報に文句を言われるのは私なんですから」
「宗介は春日にかぎらず若手には甘いぞ」
 旬が笑って口をはさむと、都はこれみよがしなため息をついてみせる。
「まぁ、今時の子に厳しくし過ぎは厳禁なんでしょうけどねぇ」
「そういう言い方、ババくさいですよ。小宮山さん」
「春日くんっ」

 宗介は都をなだめつつ、改めて大地に向き直った。

「まぁ、立花さんにアドバイスとまではいかなくても……彼女の良き相談相手になれるように頑張ってみてよ。期待してるから」

 広報課はメディア関係の仕事からの転職組が多く、会社のなかでは平均年齢が高い。キャンペーンのメイン担当の松野は優秀な男だが、親しみやすさに欠けるところがある。
 立花モモのような若い女性は大地のほうが気軽に話をしやすいかも知れない。

「彼女、グループを卒業してソロでの大きな仕事はこれが最初だ。それなりにプレッシャーもあると思うからフォローしてあげて」
「はい! 任せてください」

 大地はウキウキとした様子で広報課へと出向いていった。

「大丈夫ですかねぇ……松野さん、ものすごく厳しい人ですけど」

 都は心配そうに大地の背中を見つめていた。なんだかんだ言っても、彼女も大地には甘いようだ。


















 


 

 
< 73 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop