俺様上司との不確かな関係~好きになっちゃダメですか?~
その間も女は常にいたけれど誰とも本気にはなれずに、付き合っては別れ…そしてまた、付き合ったら別れ…を繰り返していた。

俺にとっては心から愛する女は結子だけだったから…。

この山小屋で結子の魂を探す…

結子の魂の気配を感じたことはなかったけれど…
ただ、その場所でたたずむ…それだけでよかった。

寂しかった俺の少年時代の心の糧となった結子を思い出すことで心が洗われ、そのあと怒涛のような仕事場へ戻っても心の平静を保っていられたのだと思う。


けれど、今年は…
結子を思ってこの場所に立っても結子の顔すらもう思い出せなかった。

頭の中にでてくるのは全部結菜の笑顔で、結菜の澄んだ瞳で、想い出は全部結子の顔が結菜の顔にすりかわっていて…

なんでかわからないけど結菜が『隼斗くん~!あそぼ~。』と笑顔で笑っている顔ばかりが浮かんだ。

こんなに結菜の存在が自分の中で大きくなっていたなんて…。



けれど…やっぱり結子を見捨てることはできない。
結子と結婚するって約束したんだ…俺は。
だから、顔忘れたって…絶対結子を裏切ることなんてできないのだ。

それは俺の良心が許さなかった。

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