10日間の奇跡
「いいんだよ」
「?え?」
「沙織はそのままでいいの」
どうしてなにも言わなくても伝わるんだろう。
「・・・ありがと」
この人とずっと一緒にいられたらそれでいい。
優さえいてくれたらわたしはそれ以外なにもいらない。
そんなことを思いながら信号を渡ろうとした。
青信号だったし、全然まわりなんてみてなくて。
優のことばっかりみてて。
「沙織!危ない!」
優の焦ったような顔がみえて、そのまま腕をひかれて・・・。
ドンっ
鈍い音とともに「きゃー」という悲鳴がどこからか聞こえた。
「・・・・ゆう?ねえ・・・ゆう!!」
頭から血を流して倒れているのは、わたしの大好きな人。
いくら呼びかけても返事をしてくれなくて。
救急車のサイレンが近づいてくる。
優はそのまま目を開けることがなかった。