10日間の奇跡
「どうして・・・?」
わたしだけがおかしいんじゃない。
お母さんと茅野さんだって再婚していないし、茅野さんは子供はいないといった。
弥生と凌も、他の学校の人たちも、みんな優のこと知らなかった。
この1年過ごした記憶がなくなったと同時に、優はいなくなった存在になっていた。
「大丈夫だよ」
「・・・」
「なにも変わらない」
「どういうこと?」
「最後の日に話す。だからもう少しだけ待ってて」
「・・・最後の日ってなに?優はいなくならないよね?」
「ごめん」
優はそれだけいうと背を向けてしまった。
追いかけたい、そう思ったのに足がでない。
この前までは優の姿がはっきりとみえていたはずなのに、ぽわーんと何かに包まれたように、優の姿がみえなくなった。
それが何の意味をしめしているのか、わたしは知りたくなかった。