10日間の奇跡
ずるいよ。ずるい。
どうして。なんで。
溢れ出る涙がとまらなくて、便箋にぽたぽたと落ちる。
「お客様」
「・・・っ、すいません」
「いえ。よかったらこれお飲みください」
「あ、でも」
「これは無料ですので。それと朝食の代金ここに置いておきますね」
湯気がたちこめるお茶と一緒に封筒をくれた。
そして箱ティッシュまで。
その優しさに助けられ、とりあえずティッシュで涙を拭いた。
わたしにいまできることはなに?
優がいっている10日間というのは、この世界に戻ってこれる日数なんだと思う。
ということは今日いっぱい。
なら、まだ優はいなくなっていないはずだ。
あたたかいお茶をのみ、わたしは立ち上がった。