10日間の奇跡
「ねえ優。今日の12時を迎えるまで、一緒にいよう」
今日の12時まで残り7時間ちょっとある。
こんなところで終わりを迎えるんじゃなくて、もっと他のところがいい。
優が最後の最後に苦しんだ場所じゃなくて、もっと楽しかった場所で。
座り込んだままの優の手をひっぱって、そのまま歩く。
「・・・どこいくの?」
「内緒」
「・・・はは、そっか」
力なく笑った優だけど、でもわたしは少しでも笑ってくれたことが嬉しい。
電車に揺られついた先。
「やっぱりここか」
「うん。やっぱりここだよ」
ついさっきまでいた場所。
ザァーザァー
静かな波の音。