10日間の奇跡
「俺も本当は怖いよ」
でもふと視線をあげたら優も泣いていた。
そうだった。
一番怖いのは優だった。
「みんなに忘れられるのは怖い」
「っ、優・・」
「それでも、俺はこういう選択をした。手紙にも書いたけど、ただもう一度沙織に会いたくて」
そのまま強く抱きしめられる。
「沙織には笑っていてほしいんだ」
もう終わりが近い。
それは時計なんてみなくても、優の姿をみたらわかる。
「ねえ、沙織。笑って?」
その問いかけに、わたしは無理をしてでも笑う。
「沙織、大好きだよ・・・さよなら」
「・・・まって、いかないで・・」
その言葉もむなしく、優はキラキラと輝いたまま消えていった。
まるで海に溶けていくようだった。