10日間の奇跡
「・・左のドアは・・?」
「左のドアは一番人気がなくてな。選ぶ人間も少ない」
なんだ。結局3つの選択肢なんて大したことないってことか。
「左のドアは10日間戻ることができる。それも生身の人間にな」
「それにする!」
ああ、あるじゃんか。いいやつ。
絶対それがいい。
「そなたは学習しないな。ここからが大事なところだ」
「・・なんだよ」
「まずひとつ。そなたが死んでからの世界に戻れるわけではない。今から1年前に戻ることになる。ふたつ。そなたが生きていたということは誰も覚えていない。それはもちろん友達、恋人、そして親まで。そして最後。10日間を過ごした後、そなたの魂は消える。そなたはもともと存在しなかった、つまり生まれてこなかったということになる」
「・・・・」
「戻ったところで誰も覚えていない、それどころか存在が消えてしまう。ここまで聞くと大抵の人間は選ばないが、そなたはどうする」