10日間の奇跡
「ただいま」
「おかえりなさい。ずいぶん遅かったわね」
「うん。ちょっと友達にあってさ」
家に帰るとお母さんは洗濯物をとりこんでいた。
休んでていいのにって思ったけど、わたしがこんなに遅くなったせいかと思うと申し訳なくなった。
あれから結局わたしは無難にデミグラスソースをかごにいれてレジに向かった。
それから意味もなく遠回りをした。
子供の頃よくいった公園とか、駅前とか、大きな道路の交差点とか。
わたしがもしなにかを忘れているなら、思い出せるかもしれないと思った。
でも、結局なにも思い出せなかった。
ただ大きな道路にいったときに、遠くで救急車のサイレンが聞こえた。
その音だけが、やけに頭に鳴り響いていた。