10日間の奇跡
「もし沙織が思い出すことがあったら、そのときすべてがわかる」
「やっぱりわたしが忘れてるってことなんですか?」
「いや、違う。本来なら忘れてて当然だから、でもこれ以上はいえない」
先輩が守ろうしているものはなんなのか、そこまでして隠したことはなんなのか。
それはわからない。
でもこれではっきりとした。
わたしが何かを思い出すことができれば、先輩とまた一緒にいられるのかもしれない。
「でも」
「でも?」
「できることなら思い出さないでほしい」
先輩はそういうと「じゃあね」そういって教室をでていった。
ただ静けさだけが広がった。