誓いのstatice


しばらく沈黙が続く中
マスターが先に口を開いた


「さっきお店で麻耶ちゃんも
スターチスは特別な花って
話してたよね?」




「………」



私はマスターの問いに静かに頷いた



「私にもスターチスには
特別な思い出があるんです…」




〜麻耶の回想〜

『私がまだ幼い頃…
お父さんとお母さんと3人で
静岡に住んでいるおじいちゃんとおばあちゃん家に泊まりに行った時の事…




「おじいちゃんと
おばあちゃんに
会えるの楽しみー!」




「そうだねー、お母さんも楽しみッ‼︎
でも、その前に‼︎」



お母さんはそぅ言うと
車を運転しているお父さんを見つめた



「さぁ、着いたぞ」


お父さんは静かに微笑み
お母さんを見つめ直した



おじいちゃんとおばあちゃん家に行く途中に
必ず寄って行く場所がある




車を降りた私の瞳には
辺り一面スターチスの花で
埋め尽くされていた公園が映り込んだ




「見て!見て!
小さなお花がいっーぱいあるよ!」



お母さんは優しく微笑みながら頷く



「この小さなお花はね
”スターチス”っていうの。
綺麗なお花でしょ?」



お母さんはしゃがみながら
スターチスを指さした



「うん!きれいッ!」



私は思いっきり頷いた





「ここはね、お父さんとお母さんにとって
"大切な場所"なの」



「大切…な…場所…?」




「そうよ…大切な場所」



お母さんは微笑みながら頷き
お父さんを見つめた



「この公園で父さんが母さんに
プロポーズしたんだ」


「プロ…ぉ…ポーズぅ…?」



「うん、"あなたを幸せにします。
ずっと一緒に居て下さい"って
伝えたんだよ」



お父さんは照れ臭そうに
頭をかいている




「ここは"幸せになれる特別な場所"なの…
いつか麻耶に大切な人ができたら、
その人にもこの場所を教えてあげてね」



お母さんが私の前に
そっと小指を差し出す



「麻耶、約束ねッ!」

「うん!」』



〜回想終わり〜



他の人からしたら、
公園に小さな花が咲いているだけかもしれないけど…
私にとって最後の家族の約束をした大切な場所で…
スターチスは…"特別な花"なんです…」



「………」



マスターはただただ黙って
私の話を聞いていた



「………」



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