誓いのstatice

「あの日…麻耶ちゃんが突然居なくなった後…
自分の荷物を手に取って店の裏口に戻ってきたら、いるはずの麻耶ちゃんが居なくて、麻耶ちゃんの代わりに絵里が居たんだ…


〜マスターの回想〜 


『「あれ?麻耶ちゃんは?」

麻耶ちゃんの姿が見当たらないから
その場に居合わせた絵里に聞いてみた



「あの子には帰ってもらったわよ」


「何で引き止めてくれなかったんだよ」



麻耶ちゃんの後を追おうと
その場を立ち去ろうとする俺の手を絵里は引っ張る



「それから、あの子にはこのお店を辞めるように釘刺しといたから」


「は?おい!絵里、お前、何勝手な事やってんだよ」


怒鳴らない様に怒りを抑えながら
俺は絵里を冷たくみおろす



「待ってよ、優人…」



「離せよ」


俺は絵里の腕を振り払おうとする




「……ッ…」


絵里は目に涙を浮かべながらも
俺の腕を更に強く握りしめる


「私は小さい頃からずっと優人が好きだった」


「………」


「優人とこのお店を一緒にやりたくてアメリカから戻って来たの…ッ……」



「……絵里…ごめん…少し考えさせてくれないか」
(そうだよな、仕事も辞めてここに来てくれたんだよな、絵里の気持ちを無碍にする事はしちゃいけないんだ)


泣きながら話す絵里の手を
俺は振り払う事は出来なかった


「とりあえず店に戻ろう」

俺は絵里と店に戻ることにした


Xmasィヴで夕方からは店は大忙し


麻耶ちゃんの事が気がかりでしょうがないけど
俺が店を抜ければ回らなくなる



「……ッ…」
(仕事終わったら麻耶ちゃんに逢いに行こうかな…)



気が付いた時には閉店時間を超え21時を回っていた
親父はお袋の付き添いで夕方から留守にしていた為
店内には俺と絵里しかいない



「お疲様、後は俺が片付けるから絵里は帰っていいよ」


「何言ってるのよ!2人で作業した方が早いでしょ!」



忙しさに追われていたせいか
いつもの元気な絵里に戻っていた




「もう辺りも暗いし、いくら隣とは言え夜道は危ないから」



店内を掃き掃除をしている絵里に帰る様に促す



「この後は優人と2人でデートするんだからまだ帰らないわよ!!」



「俺、この後大切な用事があるから…」


「大切な用事って何…?」


「………」
(ついさっき麻耶ちゃんの事で揉めたばかりなのに、麻耶ちゃんの名前なんて今出せる訳ないだろ)





絵里の問い掛けに返事が出来ずに黙る俺に歩み寄ってくる絵里



「まさかあの子に逢いに行くの?」

「………ッ」


絵里と目を合わす事ができない俺は後退りをする





壁際に追い込まれた俺の首に
絵里が腕を回してくる



「あの子の所になんて行かせないッ」

「…絵里…ッ…近い、離れてくれないか」


俺は絵里の腕を振りほどきながら
方向転換しながら絵里との距離を作ろうと試みる



ドサッ

「「痛いッ」」


段差に気づかずにつまずいた俺の真下には絵里が居た




〜回想終わり〜


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