誓いのstatice
第十七章【結婚式】


式当日


(とうとうこの日がやってきた)



朝、私達は勇樹の車で一緒に式場へと向かう




式場に着くと数人のスタッフが出迎えてくれた


「新婦様はこちらへお願いします」


私はスタッフの方に案内されるがまま
メイクや着替えにとりかかった




新郎新婦の部屋は別々で
着替えやメークも各自各々やるみたい


少し広い個室の中で
ウエディングドレスを身にまとう





「素敵なウエディングドレスですね。新婦様によくお似合いです!」




少し緊張気味の私に
スタッフの方が話しかけてくれた





「そうですか?勇樹も似合うって喜んでくれればいいんですけど…」




「新郎様ですよね。『式場で新婦様と初対面に変更させて欲しい』って先程、新郎様からご連絡を頂きました。きっと、お喜びになられますよ」






メイクも終わり私は
スタッフさん達と一緒に
チャペルへと移動した





この式場はチャペルが外にあり
一度外に出ないと
チャペルにはたどり着かない設計になっている




一歩一歩チャペルに近づくにつれ緊張が増す




チャペルの扉の前には
スーツ姿のおじいちゃんがいる




「麻耶、結婚おめでとう」


「ありがとう」


涙ぐむ私達にスタッフさんが声を掛けてきた




「まもなく扉が開きますのでよろしくお願いします」


「………」
(ついに勇樹と結婚するんだ)



扉が開かれた為
私はおじいちゃんと一緒に歩き出す




左側にはおばあちゃんが留袖を身にまとい立っていた




「麻耶、結婚おめでとう…綺麗だよ」




おばあちゃんの言葉に私は照れながら
身体ををかがめた




(おじいちゃん孝行やおばあちゃん孝行できたかな…)




おばあちゃんが
ベールを下ろしてくれる




おじいちゃんと腕を組んで
一歩一歩前へと足を踏み出す


(色んなことがあったな…)

私はこの半年で起きた出来事が次々と頭をよぎり
勇樹を見る余裕がない





(あと少しで勇樹のいるところ…勇樹と結婚して幸せな家庭を築くんだ)





そう思った瞬間
歩いていた私の足が止まる





「え……どうして?」




そこにはいるはずの勇樹の姿はなく


いるはずのないマスターの姿があった




「なんで麻耶ちゃんが…」




マスターも驚いているみたいだった




「麻耶」
「優人」

「「結婚おめでとう」」





そこには
私の新郎だったはずの勇樹と
マスターの新婦になっているはずの絵里さん
が笑っていた



「え?どういうこと…」




全く状況が掴めない私は首を傾げた




よくみると新婦側の席には私の親族や友達に勇樹
新郎側にはマスターの親族や友達に絵里さんがいた




状況を掴めないのはマスターも同じ事だった
マスターが口を開く



「絵里…どういうことだ?」




「勇樹…ちゃんと説明して…」


私も勇樹に話を聞く





「麻耶…俺は麻耶を幸せにしたい。麻耶がプロポーズを受けてくれた時も本当に嬉しかった。
でも…麻耶は自分に嘘をついてまで俺のそばにいてくれようとしてるって気づいたんだ…
だから麻耶には本当に好きなやつと結婚してもらいたいと思ったんだ。
だから『statice』に何度も通ってそこで絵里さんの存在を知ったんだ…」




絵里さんが勇樹に続いて話始める




「勇樹くんに何度も頭をさげられたのよ…麻耶ちゃんは優人が好きなんだってね。
私も優人が好きだったから何度も断ったわ……
でも…『あの人があなたのこと好きなようには見えない』って言われたのよ。
そんなの最初から分かってた。
優人は優しいから…私を愛せなくても側にいることが優しさだと思ってる。
だけど…私は優人の笑顔がこれ以上消える事が怖かった…。だから私は彼に協力したの」



勇樹が私とマスターの顔を交互に見る



「だからこれは優人さんと麻耶…2人の結婚式だよ」



絵里さんも頷いている



「勇樹…」

「絵里…」




私とマスターはその場に立ち尽くす事しかできなかった





(2人だけが幸せになるなんて許されるの?)






「「…………」」



私とマスターは言葉を失い
ただただ立ち尽くす




新郎側の席に座っていたマスターのお母さんが口を開いた





「優人、まだ分からないの?
みんながあなた達の幸せを望んでいるのよ。
自分の気持ちに素直になったら?」



「……ッ」


ぐうの音も出ないマスターを他所に
マスターのお母さんは私の手をとった


「それは麻耶ちゃんにも言えることよ…こんな息子だけどよろしく頼むわね」





マスターは決心を付けた顔で私を見つめた





「麻耶ちゃん…俺と結婚してください」

「……はい」







式場には拍手が沸き起こる




式は再開され
バージンロードを一歩一歩歩いていく




(もう見失わない、愛する人の元へ)





みんなが見守る中、式はどんどん進んでいく



「では、指輪の交換を…」



すでにお互いの指輪は用意されていた



私の薬指に
マスターの薬指に
指輪がはまった




「誓いのキスを…」




ベールが脱がされマスターの顔がはっきり見える





(マスターと出逢ってからいっぱいいろんなことがあった
マスターを好きになって
勇樹を傷つけ…絵里さんを傷つけて
それでも…
その2人のおかげで今私はこの人の隣に立っていられる)



「優人さん」


キスをする前に私は優人さんにしか聞こえないぐらい小さな声で自分の思いを伝える




「大好き…」

「俺も“麻耶”が好きだよ」



私たちは誓いのキスをした



お互い永遠に変わらぬ心でいられるように



チャペルでの式を終えた私達は
開かれた扉から外へと出た



「おめでとう‼︎」

「お幸せに‼︎」


みんなから次々と祝福の言葉をもらうと共
にフラワーシャワーをもらう



「「優人くん、麻耶、おめでとう‼︎」」


おじいちゃんとおばあちゃんに続き


「優人、麻耶ちゃん、おめでとう‼︎」
「麻耶ちゃん、優人の事頼むわね‼︎」


マスターのお父さんとお母さんからの
祝福に自然と頰がほころぶ






「麻耶おめでとう。優人さん、麻耶を幸せにしてください」


「分かってる。2人がしてくれた事は一生忘れない」




勇樹はマスターと言葉を交わしている
その横で私は絵里さんを見つめる



「絵里さん……」




「優人、麻耶さん、おめでとう‼︎
もうあんなバカな真似はしないから安心して! 私も私だけを愛してくれる人を見つけるんだからっ!」




「「2人ともお幸せに‼︎」」




最後に勇樹と絵里さんの2人のフラワーシャワーを受けた




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