誓いのstatice
第三章【隠れ両思い】
月日が流れて5ヶ月
冷たい風が肌寒く感じ
ひらひらと雪が降り始めた12月
(私が『statice』にきてちょうど5ヶ月かぁ!
自分で出来る事も増えたし
今日も一日頑張ろうっ‼︎)
気合いを入れて朝支度をしていた私の横を通り過ぎる勇樹
「俺、今日会社の忘年会があるから
帰り遅くなるねー」
「うん、分かった。
行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」
私はいつも通りに勇樹を見送り
勇樹もいつも通りに会社へと出勤した
「さぁ、私もバイトに行かなきゃ」
冷たい風に吹かれながら
私も『statice』へと向かった
「おはようございます」
「あ、おはよう。麻耶ちゃん」
ドアを開けるとお店にはマスターしかいない
「あれ?今日はマスターだけですか⁉︎」
マスターのお父さんは
毎日、私を出迎えてくれてから
奥さんのお見舞いへと病院に行っている
「…うん。ちょっと母さんのとこに行ってるんだ…」
一瞬、マスターの顔が曇った気がする
「あの…」
「今日も頑張ろうね!麻耶ちゃん!」
何があったのかマスターに聞こうとしたと同時に
マスターがいつもと変わらない笑顔で声をかけてくれた
(マスター…何かあったのかな…
でも…なんだか…聞いちゃいけない気がする…)
ここ数日の『statice』は
冬休みを迎えた学生達や家族連れのお客さんで賑わっていた
忙しさに追われ気が付けば
時計の針は21時を指していて
窓の外は真っ暗になっている
プルルル…プルルルル…
お客さんもいなくなり
私とマスターの2人きりになったお店に
一本の電話が鳴り響いた
マスターがおもむろに
電話の受話器をとる
「お電話ありがとうございます。『statice』です」
電話越しの相手と話をしているうちに
曇っていたマスターの表情が少しずつ晴れていく
マスターのにこやかな顔を見れた私は
ホッと一息つきお店の入り口でマスターを待っている
電話を終えたマスターは私の元へと走ってくる
「ねぇ今日はちょっと俺に付き合ってくれない?少しの間でいいから、お願い…」
私はマスターに手を掴まれ
車に乗るように促された
(あれ?いつも歩きなのに…今日は車…?
今日、一日中マスターの様子が変だったし
…どうしたんだろう…)