rain
第一章
日が傾き始めた頃。一台のタクシーが、街外れの小道で停まった。
「ーーーはい。お釣りだよ、お客さん」
「ありがとう」
その客は礼を言ってお釣りを受け取る。
「それにしても、こんな所で降りてどうするんだい?まさか、例の屋敷にでも行くつもりかい?」
初老の運転手が訊くと、客は頷いた。
「あんた、正気かい?あんな幽霊屋敷、地元の人でさえ立ち寄らんのに」
「正気よ。一週間前にアタシの妹が失踪してね。SNSの履歴から、その屋敷とやらに友達と肝試しに行ったっていう情報があって。警察も動いてくれてるみたいだけど、居ても立っても居られなくて」
「それじゃ、お客さん。あんたこの間のニュースになってた女の子の・・・」
「そうよ。あーあ。せっかくの有給が、お馬鹿な妹のせいで台無しだわ。ほんっとに心配ばかりかけて、全く。見つけたら引っ叩いてやる」
客はやれやれといった様子で額に手を当てる。パーマを掛けた髪はグレージュで毛先に掛けて派手なブルーに染まっている。伸びた爪には、ネイビーのネイルに、澄んだブルーの瞳。
派手なメイクからして、美容にはこだわりがありそうだ。
「妹さん探しは良いが、あんたも気をつけて行きなさいね。・・・ほれ、懐中電灯の一つ、持って行ったら良い」
「あら、悪いわね。ありがとう」
タクシーに備え付けてあった非常用の懐中電灯を受け取り、客は自身の紺のリュックに入れた。
よいしょとタクシーの座席から腰を上げ、紺色のスニーカーを地面に付けた。
立ち上がると、女にしては背が高い。白いYシャツの上に肩掛けされた、鮮やかなブルーのカーディガン。ハイウエストのデニムのせいか、とても脚が長く見える。
「懐中電灯、ありがたく使わせてもらうわね」
「あぁ。気をつけなさいよ。それじゃあね」
バタンと、タクシーのドアが閉まる。去って行くタクシーを見送って、深く息を吐く。
深呼吸をして、森の小道へと歩き始めた。
「ーーーはい。お釣りだよ、お客さん」
「ありがとう」
その客は礼を言ってお釣りを受け取る。
「それにしても、こんな所で降りてどうするんだい?まさか、例の屋敷にでも行くつもりかい?」
初老の運転手が訊くと、客は頷いた。
「あんた、正気かい?あんな幽霊屋敷、地元の人でさえ立ち寄らんのに」
「正気よ。一週間前にアタシの妹が失踪してね。SNSの履歴から、その屋敷とやらに友達と肝試しに行ったっていう情報があって。警察も動いてくれてるみたいだけど、居ても立っても居られなくて」
「それじゃ、お客さん。あんたこの間のニュースになってた女の子の・・・」
「そうよ。あーあ。せっかくの有給が、お馬鹿な妹のせいで台無しだわ。ほんっとに心配ばかりかけて、全く。見つけたら引っ叩いてやる」
客はやれやれといった様子で額に手を当てる。パーマを掛けた髪はグレージュで毛先に掛けて派手なブルーに染まっている。伸びた爪には、ネイビーのネイルに、澄んだブルーの瞳。
派手なメイクからして、美容にはこだわりがありそうだ。
「妹さん探しは良いが、あんたも気をつけて行きなさいね。・・・ほれ、懐中電灯の一つ、持って行ったら良い」
「あら、悪いわね。ありがとう」
タクシーに備え付けてあった非常用の懐中電灯を受け取り、客は自身の紺のリュックに入れた。
よいしょとタクシーの座席から腰を上げ、紺色のスニーカーを地面に付けた。
立ち上がると、女にしては背が高い。白いYシャツの上に肩掛けされた、鮮やかなブルーのカーディガン。ハイウエストのデニムのせいか、とても脚が長く見える。
「懐中電灯、ありがたく使わせてもらうわね」
「あぁ。気をつけなさいよ。それじゃあね」
バタンと、タクシーのドアが閉まる。去って行くタクシーを見送って、深く息を吐く。
深呼吸をして、森の小道へと歩き始めた。