願い
俺は順調に貯金を増やしていた。


親父が残した借金は五百万近くあったが、借金の利子も膨れ上がり、五百万以上返済しなければならない状態だった。



だが、もう手の届く金額まできていた。
 


学校から帰って、店がオープンするまで睡眠をとって仕事に行き、仕事が終われば、少し仮眠をとって学校に行くという生活の中で、忙しく働くおふくろと会うことは滅多になくなっていたが、それでももう少しの辛抱だと、自分を自分で落ち着かせていた。



借金が返せれば俺もホストを辞め、おふくろも無理に仕事をすることもなくなる。
 


普通に学校に行き、おふくろは普通に働く。


夢にまで見た生活があともう一歩のところまで来ていた。
 




俺の今叶えたい一番の夢。
 

俺はおふくろに約束したんだ。


「生活が落ち着いたら一緒に温泉に行こう。俺が連れて行ってあげるから。絶対に」

「智也と温泉かぁ……お母さん楽しみにしてるからね」
 



俺はこの時のおふくろの笑顔を今でも忘れられないんだ。
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