願い
第五章 『誘惑』
営業終了と供に、店を出て、俺はタクシーに乗り込んだ。

「西新宿のパークハイアットまで」
 
きっと行ってしまうのだろうと分かってはいたが、やはり俺はエリコさんが泊まっているホテルに向かっている。
 

エリコさんとは何度もセックスしているが、エリコさんとのセックスがとくに気持ち良いと感じるのは、エリコさんは俺の感じるツボを知っているからだ。



それもそのはずだった。



俺はエリコさんからセックスを学んだ。



俺の初めての相手だ。
 



俺はエリコさんとセックスするまでセックスというものを知らなかった。



誘惑はたくさんあった。



客がいくら体を張って誘惑してきても、俺は誘いには乗らなかった。



興味がなかったといえば嘘になるが、その当時はおふくろのこと、金のことで頭がいっぱいで、セックスなんて二の次だった。




それどころではなかった。 


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