梅雨が始まるまでに
その後もあの人はまめに連絡をくれるし、会うと優しくしてくれる。
悲しそうな表情をするとすぐに大丈夫?と聞いてくれる。
心配も優しさも嬉しいけれどその根本にあるのは、
私が求めているのとは違う感情であることを知っている。
だから余計に悲しさが増すのだ。
そして、今日も曖昧な関係の一夜を過ごす。
求められても満たされない感覚と虚しさは増す一方だ。
一日楽しんだ最後の帰り際にはやはり彼の優しさに縋る。
私ってこんなに弱くて情けない人間だったんだなと最も実感する瞬間だ。
もちろん都合のいい関係とやらを築き上げている私たちは、しっかり別れる。
この人と関わることで私の心が何か変わるのではないか
こんなつまらない毎日を変えてくれるのではないか。
そんなことを考えた。
でもそれは願望でしかなっかたんだよ。
いくら優しくされたところで、そこに好きもなんにもないと
思ってしまうたびにこみあげてくるものは全然楽しくなんかない。
ああ、そっか。誰かに何かを求めても仕方ないんだ。
何度目かの失敗と心苦しさの感傷に浸りながらようやく、分かった。
その日から流されて関係を持つのをやめた。